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冬は役立たずの自動ブレーキ

事故を飛躍的に激減させる自動ブレーキ

近年、車にも障害物・先行車・歩行者を発見して自動的にブレーキをかけて衝突防止または衝突しても互いの被害を軽減させることが出来る【自動ブレーキ】が装備される車種が増えて来ました。

当初は高級車やプレミアムカーだけでしたが、庶民の足の軽自動車にも装備(又はオプション設定)されるのは嬉しい事です。

少しでも事故が減れば良いことですし、ある自動車メーカのデータでは「衝突事故が6割以上減少」という報告もあります。

車の事故には多種多様な原因がありますが、まず衝突を防げれば事故全体の件数のかなりの部分の低減になり、確実に交通事故死を減らすことが出来るはずです。

この機能でやっと車は他の乗り物(鉄道、飛行機、ある規模以上の船舶など)と衝突に関しては同列(に近いレベル)になることが出来たのです。

自動車は馬力、燃費、快適さなど非常に多くの進歩をしてきましたが、他の乗り物と比べて大きく劣っていてしかも進歩が無かったのが安全性だと言えると思います。

ぶつかった時に客室のつぶれを最小限にする、などの対策は取られて来ましたが、「ぶつからないように」という点ではあらゆる乗り物の中で最低ランクと言える状況だったからです。

今までは衝突に関しては、「エンジンルームなどをクラッシャブルゾーンとして衝突時にわざとつぶし、客室のフレームは強固にして、衝撃を分散させる」などが対策でしたが、どんなに念入りな設計をしても軽自動車が大型トラックにぶつけられたらスクラップになってしまいます。

でも「ぶつからなければ」どんなに小型で軽量の車でも安全なわけです。
だからこそ自動ブレーキは公道を走る全車種に装備されてほしいと思うのです。

(過去の車も部品の追加などで技術的には装備は出来ます。)

 

自動運転も研究されていますが、まず自動ブレーキに関してはオプション設定ではなくて全ての車に「エンジンやタイヤがついているように」当たり前の装備にして頂きたいです。

冬は役に立たない自動ブレーキ

ところが自動ブレーキには致命的な問題があります。

それは冬道では役に立たないという事です。

まだまだ発展途上のシステムですが、過日テレビで自動ブレーキ装着車に乾燥路面と凍結路面で動作の比較をやっていましたが、凍結路面ではぶつかりそうになると警告音がなりますが全く止まれずにぶつかっていました。

当然の結果だと思います。

目標物への距離センサーなどはちゃんと働いていたようですが、結局「タイヤ」がダメなんです。

つまり自動ブレーキシステムとは別にスタッドレスタイヤに問題があります。

今の自動ブレーキは冬と夏タイヤの別、路面状況の判断などは行っておらず「夏タイヤの乾燥路面」を基準にしていると思われるので(メーカによりソフトウエアのさじ加減はあると思うが)、冬は役立たずです。

 

これを改善するためには今や緊急自動車以外は使用禁止になったスパイクタイヤ並みの性能のタイヤを装着し、かつ路面の凍結などを判断して乾燥路面よりも手前から警告を出してブレーキをかけるシステムにする必要があるのです。

路面凍結を直接検知はかなり難しく、コストもかかると思いますが単純に外気温の測定だけで出来るはずです。

一般に気温が-3度以下になると路面凍結の確率が高くなるのでそれを目安にすればよいし、温度センサーを低い位置に設置しても確度は上がると思います。

ただ吹雪いたりしていると距離センサーが正しく動作しなくなると思うので、その点をどうするかです。
画像処理でかなり解決できるかもしれませんが、猛吹雪になると正面が真っ白で何も見えなくなり、いきなり先行車や交差点が見えて来るという恐ろしい事がありますので、かなり難しいかもしれません。

↓ホワイトアウトの例。(白く塗りつぶしたのではありません)
  札幌市内でもこうなることがあります。





どんなに優秀な自動ブレーキでもタイヤの改善が先

各メーカは冬や凍結路面も含めて色々と考えているとは思いますが、結局凍結路面でも夏並みに停まるタイヤが必要なのです。

現行のスタッドレスタイヤだと実際の実験データから以下のようなものが報告されています。


40km/hから急ブレーキを踏むと、乾燥路面では約20mで停車するが、圧雪路面だと70m必要。

凍結路面での停止距離は乾燥路面の10倍以上の距離が必要。

凍結していない降雨時の停止距離は夏タイヤの5割以上必要。

乾燥路面でも夏タイヤに比べてスタッドレスタイヤの停止距離は3割以上長くなる。

スタッドレスタイヤが冬道で性能を発揮できるのはタイヤのメーカ/種類、車種にほぼ無関係で40 ~50km/h以下まで。


スタッドレスタイヤは雪や凍結路面では夏タイヤに比べて大変に優秀な性能を発揮しますが、実際は飛躍的に優れているものでもなくて、結局「冬道は速度を落として慎重な安全運転が必要」になるタイヤなのです。

多くのメーカが毎年改良されたスタッドレスタイヤを発売し、「従来品より10%手前で停まる!」など宣伝をやっていますが、決して飛躍的な性能アップがなされているわけではありません。

タイヤの接地面の形状やゴムの材料の配合などを工夫して毎年進化しているのは事実ですが、「柔らかいゴムで、氷表面の水分を吸い取って路面に密着させる。」という根本的な原理が同じなので劇的な進歩がないのです。

例えば「往年のスパイクタイヤのように硬いゴムのスパイクがたくさん出ていて、氷を確実に捕らえて突き刺さる。でもアスファルトには侵襲しない。」というようなタイヤが出来ればまた話は違ってくると思います。

 

結局冬道での自動ブレーキ、自動運転は優秀なタイヤの登場が必要だと思います。

報道で「冬道で自動運転の実験を行い成功した」と言うのを見たことがありますが、快晴で滑りにくい圧雪(直下に氷が無い路面)だけでツルツル凍結路面で行っていないのにはガッカリしました。

でも日本の技術陣は必ず克服してくれると思います。

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