Sponsored Link

雪道・凍結路でのFF/FRでの坂道発進

冬道でのFF/FRでの坂道発進

3月とはいえまだまだ雪道、凍結路の残る北海道。
場所によってはゴールデンウィーク明けても凍結路面は残り、峠などは通行止めになる区間もあります。

北海道を走る一般乗用車の過半数は4WDですが、実はFF/FRの車両もかなり多く走っています。
バスはFR、タクシーは最近出てきたワゴンタイプのJPN TAXI以外のセダンは恐らく7~8割はFR、そして残りの多くがFF、個人タクシーの一部が4WDという状況のはずです。

個人所有車もセダンの多くはFR、現在4世代目が登場していますが3世代目までのプリウスは全てFF(道内もプリウスものすごく多いです)、1世代前のバカ売れしたアクアもすべてFFです。

トラックも小型の一部を除けばFRです。

つまり道外の方が思われるほど北海道の4WDの比率はそれほど高くないのです。

我が家の車も東京で買ったFF車ですが、4WDでない車は主に以下の3種類の路面での坂道発進は極めて難しくなります。

1、ツルツルの凍結路

2、圧雪で磨かれた雪道

3、雨や春先に雪が溶けて大量のシャーベット状になった雪道

なお勘違いしてほしくないのは「FF/FRでは上記路面では絶対に坂道発進出来ない」とか「4WDならば問題ない」ということはありません。特に「3、」の大量シャーベット路面では4WDも発進が難しく平坦路でも立ち往生することがあります。

今回の記事は特にFF/FR車での冬道の坂道発進について考えてみようと思います。

FF/FRは冬道の坂道発進はどれほど難しいのか?

すべての道で、ということはありませんが先述にも述べた3種類の道では完全停車後からの坂道発進は非常に難しくなり、時に全く起動不能に陥ることがあります。

私も何度も経験していますが、そういう場合はハザードランプをつけて後退しても良いので安全な路肩に車両を寄せます。

坂道とはいっても下から上まで全部同様の路面状況の道はありませんので、少しでも路面にアスファルトや土が覗いている、あるいは氷や雪だけどあまりツルツルしそうでもなくて、ザラザラが多そうな場所に車両(駆動輪)を移動させます。

そして発進を試みるのです。一度でダメなら複数回行います。

でも何をやってもダメな事もあります。というかありました。
その場合はゆっくり路肩を後退しながらハンドルを切り、Uターンして坂を下るしかありません。

発進出来ないからとアクセルを強く吹かしたりするとスピンを起こして大事故を引き起こす危険もあります。

FFでさえ大変ですが特にFRだと難易度は更に1~2ランクアップします。

冬は夜のススキノなどでFRのタクシーが豪快に車体後部を左右に振りながら発進しているのを見ることが出来ますが、平坦路でさえツルツル路面だとFRの発進はかなり難しいのです。
ましてや二種免のプロドライバーでさえこの有様です。



坂道でのFF/FRの特性を考えてみよう

4WDには全くかなわないにせよ、FF、FRのどちらが坂道に強いか?という議論もあります。
最初に結論を言ってしまえば「FFがやや優勢だが似たようなもの」になるのですが、特性が異なるので路面によっては差が出る可能性もあるのです。それを考えてみたいと思います。

分かりやすくするために以下のような車の説明図を作ってみました。
下手くそですが比較的わかりやすいのではと思います。

なお以下の「ツルツル路面」とは凍結、圧雪の雪道、大量シャーベット路面の全てを含んで説明しています。

まず以下をご覧ください。これが説明の基本図となります。
赤の四角はエンジンを表します。つまり車体で一番重たい部分です。
タイヤの黒の塗りつぶしは駆動輪です。以下の図だとFF車になります。
後ろ側のタイヤが塗りつぶされていればFR車です。

1、FFでの坂道発進
    この場合は以下となりますが、発進時に何が起こるかというと荷重は後ろにかかるので、前の駆動輪は浮き気味になります。

つまり駆動輪の真上にはせっかく重たいエンジンがあってタイヤを路面に押し付けているはずなのに駆動輪が浮くので地面を捉える力が減少してしまい(トラクションが抜けてしまう)ツルツル路面だとタイヤを押し付ける力が減るので発進が難しくなります。

2、FRでの坂道発進
FRだと坂道発進での荷重は駆動輪である後ろのタイヤにより大きくかかるようになります。
ではツルツル路面での坂道発進はFRが有利、というのは拙速です。

なぜならば発進時に後ろにかかる荷重よりも前部にあるエンジンが前輪を押さえつける力の方が一般的には大きいからです。
もしこの場合でも後輪にかかる荷重の方が大きいとすれば、それは乾燥路面でも発進が難しいほどの急勾配になるはずです。

ですのでFR車でのこのような場合はケースバイケースということになります。
もっとも車体後部に重たい荷物をたくさん積んでいたとかであれば、同じ条件の路面ではFFよりも有利になる可能性もあり得ます。

3、FFで坂道をバックで登る
このような運転は実際に何度も遭遇します。通常走行ではありえませんが、例えば狭い道ですれ違わなくてはならない時に、FFであるこちらが少し広いところまで後退するなどの場合です。

この場合、発進に伴う荷重は坂の下側の駆動輪にかかります。
つまり駆動輪は「エンジンという重たい部品によって路面に押し付けられる力」と「発進時にかかる荷重」が合わさった力によってより強くタイヤが路面に押し付けられるのです。

これは一番駆動輪にトラクション(駆動力)がかかる例となります。車の全重量、とまではいきませんが相当量の荷重が駆動輪にかかります。

実は私は今月初旬にこれをツルツルの坂道で体験しました。
ツルツルの住宅地の裏道で左右からの雪のせり出しも多く、夏ならば問題ないのにすれ違うことが出来ず、途中の広いところに車を移動させなくてはならないような場所でした。

私が表通りの交差点に続く下り坂を走っていたところ、こちらにやってくる車がいました。
そちらの方が表通りから早く入って来て、しかも表通りは交通量が多いのでこちらが途中で止まって相手に譲るべき状況でした。

私の退避場所に好都合の場所はいったん後退しなくてはならなかったのですが、ツルツルの下り坂をFFであるマイカーが逆走するというのは最悪起動不能になる可能性もあり、かなり躊躇しました。

しかし前から来た車の他、歩行者も待っていて(歩道は除雪された雪で完全に潰されている)私が後退する以外に方法はなかったのです。

思い切ってギアをRに入れてツルツル路面を後退し始めたのですが、「え?」というくらいスムーズに後退できたのです。

つまりこの時の後退が本例そのものなのです。ツルツル路面だけど後退方向は登坂なので前輪には大きな荷重がかかり、タイヤが凍結であっても路面に強く押し付けられたのでいとも簡単に後退出来た、というわけです。

なるほど、と思いましたがこれが普通の凍結路面だったからよかったのです。
恐らく雪が溶けだして大量のシャーベットになっていたらこうはいかなかった気がします。

つまりシャーベット状の路面なのでタイヤに荷重が大きくかかるほどタイヤはシャーベットの中に沈んでいくのです。

そして「これ以上は沈まない」という限界まで沈んだら今度は空転するタイヤが路面を激しく磨き上げて、さらに摩擦が減り動けなくなります。まさに蟻地獄状態です。

このような大量シャーベットだと坂(昇り降り共に)、平坦路無関係に4WDでも発進出来なくなる可能性がありますので、4WDでも過信してはいけません。

冬の北国はあちこちで動けなくなっている4WD車も見ることが出来ます。




4、FRで坂道をバックで登る
今度はFRで考えてみましょう。以下の図となります。

この場合は起動しようとするとエンジン側の無動力の前輪に荷重がかかり、駆動輪の荷重は抜ける方向になります。
つまり車体後部が浮き上がる力が駆動輪にかかるので発進面ではFFよりもかなり不利となります。

道内を走っている多くのセダンタイプのタクシーが該当します。多分タクシー運転手さんは日常的に経験しているはずです。

しかし駆動力伝達で非常に不利となる本例では起動出来なくなるか、と言うと断言は出来ません。
やはり路面状況と坂の角度によります。ツルツル路面でも駆動輪側の路面がザラザラの氷とかだったら比較的簡単に起動出来る可能性もあります。でもブラックアイスバーンのように非常に平滑度の高い路面だとかなり難しいと思われます。

雪道・凍結路面の坂を2WDで安全に走るためには

「2WD」でと書いていますが、実際は4WDオーナーの方も同じだと思って頂きたいです。

最初に大切なのは、実際の道路では難しいのですが「坂の途中で極力止まらない」ことです。
ツルツル路面の坂は一度停まると全く起動出来なくなる可能性が非常に高くなります。

4WDでは大分マシになりますが、それでもブラックアイスバーンの坂道の途中で止まるとかなり難儀します。

私はこれで何度も起動不能になり、「途中で引き返した」、「近隣住民の方々に押してもらったり滑り止めの砂を撒いてもらった」などで何とか起動出来たとかを経験しました。

「途中で止まるな」と言っても田舎の殆ど車の通らない道でない限り実際には不可能に近いですので、違う言い方をすれば「ツルツル路面の坂道には2WDで登るな」ということに尽きます。

かなり無責任かもしれませんが実際これ以外の方法はありません。
ただし例外もあります。それは「ロードヒーティングの入っている道」、「終日交通量が多い幹線道路」に関しては2WDでも登坂を気にする必要はありません。

ロードヒーティングは坂道で入っていないと登り坂だけでなく、下り坂で止まれなくなります。4WDでも同様です。

また1~2月の厳寒期でも終日交通量が多い幹線道路は車道中央に雪が積もっている、ツルツルの凍結路面になっているという場所は比較的少ないのです。

これは車のタイヤの摩擦熱、エンジンからの放射熱などによって路面温度が一定以上に保たれている事が多いので、場所によっては1月でも路肩以外はまるで夏のような路面の場所もあります。

でも幹線道路でもビルや切通などで終日陽が当たらないような場所は氷が残っていたり、ブラックアイスバーンになっている個所もありますので要注意です。

FRのタクシーに乗ると(JPN TAXIとプリウス、アクセラなど以外の殆ど)行き先によっては運転手さんから「あそこの坂は今の季節登れないので手前の〇〇まででも良いですか?」とか「少し遠回りになりますが、登坂から降りる方向で行くようにしても良いですか?」と言われることもあります。

いずれにしても幹線道路以外の冬~春先(大量のシャーベット路面)の坂道は要注意です。
4WDの方も舐めて侵入すると痛い目にあうこともあります。




恐ろしいブレーキをかけたかけたままの後退

どういうこと?と雪国以外の方は疑問に思われる事でしょう。
文字の通り、「しっかりとブレーキを踏んでいるのに車体が下る方向に後退する」ということです。

普通に考えたら道に油を撒かない限りあり得ないことです。

しかし厳寒期の北海道ではあるのです。実際に数度見たことがあります。

坂道で信号待ちなどで止まっている車はブレーキランプを点灯させて停車していたのですが、じわじわと後退していたのです!

つまりブレーキがかかってタイヤがロックされた状態でツルツル路面をバックし始めたのです。
これには後続車は相当驚いたようでクラクションを鳴らしていましたが、後続車の後ろにも車列は続いていて、衝突を避けるためのバックも出来ません。

見ていたらブレーキをかけたままの車は少しハンドルを左右に数回切ったらすぐに車体は止まったのですが、危うく後ろに追突という状況でした。

幸い私自身はこの経験はないのですが、見る方としては数回あります。でも衝突はまだ見ていません。

これは坂がブラックアイスバーンの時に起こります。

ただ、多くのロードヒーティングがない坂道は平坦路よりも凍結防止剤を多く撒いてくれているのでそんなに頻度が高いわけではありません。

しかし凍結防止剤を撒く間隔や量は高速道路に比べたら一般道ははるかに少ないので、本件に限らずすべての車はごく僅かな坂道でも慎重に運転すべきです。

 

スポンサーリンク

サブコンテンツ
 

このページの先頭へ