冬道はどの車線を走るべきか?
冬道の車線
雪国の道路の路肩は除雪された雪が山となっていて、道幅はかなり狭くなります。
◆片側1車線だが夏は十分にすれ違えることのできる道幅の道路
→ すれ違う際はどちらかが広い場所に避けたり、または広い場所までバックして安全にすれ違える場所に移動します。
◆片側2車線(以上)の道路
→ 一番左側の車線は除雪された雪でつぶれてしまい、実質片側1車線道路と同じになります。
もちろん路肩や歩道側が広くて車道が夏と同じ片側2車線以上確保出来ている道路もありますが、冬でも気温が高くなって太陽が出る日、春先などは除雪された雪の山が融けたアイスクリームのように車道に流れ出して道幅が狭くなります。そしてこの溶け出した雪が夜中に凍結して朝はツルツル路面となり大変危険な状況になるのです。
◆除雪された路肩の雪山の功罪
→ 本来の車線数、車線幅(幅員)が十分に確保されている道であっても、高く積まれた雪山が視界を大幅に制限し、特に側道から出てくる車は本線側が全く見えず大変危険です。これはワンボックス車など鼻先が極端に短い車であっても本線側にはみ出さないと全く見えず、いつ接触事故を起こすか分からないような恐怖を味わいます。事実このような場面での接触事故は一冬に何度も起きています。
また道内では比較的雪が少ない札幌市で、かつ中心部に近い場所でも路肩に積まれた雪は時に2mを軽く超えるほどの高さにもなります。だから側道側も本線側もお互いが全く見えず危険です。
当サイトの他記事では冬道は「凍結」と「吹雪(ホワイトアウト)」の恐ろしさを中心に言及して来ましたが、今回取り上げるのはそれらに加えて「道路のどの車線、どの付近を走れば安全か?」ということとその注意事項について説明します。
冬はどの車線をどのように走れば安全なのか?
これは非常に難しい問題で同じ場所でも午前と午後、そして翌日になれば道路状況が全く変わるからです。
まず片側2車線以上の道路の走行の基本は「一番左側を走る」ということですね。
ずっと右側を走り続けると「通行帯違反」という道交法違反になり検挙対象です。
高速道路での違反理由は1位は「速度違反」ですが、2位がこの「通行帯違反」になるそうです。
左側が開いているにも関わらずずっと追い越し車線を走り続けるという違反ですね。
(片側3車線以上の道路は右端以外の車線は全て走行車線なので、トラックなど特段に指定のない限り何処を走っても違反になりません。)
勘違いされる方も多いのですが、一番右側は実は本来走ってはいけないのです。
そしてこれは一般道にも適用されます。しかし一般道は左側に駐停車(タクシーやバス含む)の車が多かったり、工事やその他理由で左側を走れない、左折車が多く非常に混雑しているなどの理由で警察は大目に見ているのです。
では雪道で左側を走り続けると実際にはどのような事が起きるでしょうか?
まず先述したように路肩の雪山がせり出していてまともな1車線分の幅がありませんので、どうしても右側に寄ったり、また左側に戻ったりしながらの運転となります。
混雑している道路だと右側から迫って来る車に気を付けなくてはいけませんし、このような走り方が冬道の渋滞の原因の一つともなります。
そして一番問題となるのが側道から出てこようとする車が直前まで見えないということです。
これは本当に恐ろしい事です。鼻先が短い車はもちろん、長い車なんて本線にせり出さないと見えないからです。
一例として以下の写真をご覧下さい。
片側2車線の札幌市内の道路ですが、左側車線の幅も夏に比べれば2/3くらいしかありません。
そして前の白い車の左側は側道なのですが、ここからいきなり車が出て来ることが多々あります。
「いきなり」と言っても無謀に突っ込んでくるわけではありません。側道から出て来たい車も左右の雪の壁で全然見えないので見えるところまで出ると、本線側の車からは「いきなり飛び出して来た」という風に感じるのです。もちろんこれによる接触事故もあります。
(以下の写真の雪山はまだ全然低くて良い方です。しかもこの雪山はやや溶けて丸みを帯びていますが、厳冬期の雪山だと融けないのでもっと角ばっていて更に視界が悪くなります。)
このような場所で恐い思いをしないようにするには右側車線を走るか、右後方に車がいないことを確認してから信号機の無い側道の交差点ではやや右側に寄って視界を確保するしかありません。
でも渋滞時はちょっと難しいですね。札幌市内はもちろん北海道はどこも渋滞なんて無縁と思われがちですが、冬はかなりの大渋滞になる事もあります。やはり車線が1本潰れるという事が大きな理由です。
さらに路面凍結などがありますのでどうしても速度を落とさざる負えません。
結論として少しでも安全に走るには右側車線を走るのが良いという事になります。
しかしこれにもリスクがあるのです。
車線に絡む走行リスク
冬道で車線に起因するリスクは以下のようなものが考えられます。
1、左側車線を走る時
(1)側道から出て来る車との接触
先述したように雪山が路肩にあると、側道からは本線側が全く見えませんので、そろりそろり前進してもいきなりボンネットの先端が本線を走行して来た車と接触する可能性があります。
雪のない季節では全く安全な側道からの交差点でも高く積み上げられた雪山があると、それは恐ろしい交差点になるのです。
どうしてもこのような側道から本線に出る必要がある場合は、ボンネット先端が本線上にかからない範囲で極低速で前進し、かつ可能な限り左側の雪山に車体を寄せます。そうすれば僅かでも右側の視界が広がりますので本線を走って来る車が確認しやすくなります。
しかし場所によっては雪山のせいで車体1台分ぴったりの幅しか無い部分もあります。
そのような場所は無理をせずに、迂回して視界が良好な場所または信号機のある交差点に行くべきです。
「慣れているから」、「普段通るから」という気持ちでは必ず接触事故を起こします。
また路面が凍結していることが多く、急ブレーキを踏んでもスリップして停まらないだけでなく、車体がスピンしてしまう事もあり、更なる被害の拡大もあり得ます。
(2)路面の凍結や雪で走行が不安定になることがある。
路肩側に除雪された雪があるという事は、気温の低い北海道では路肩が凍結している可能性が非常に高いということです。
もちろん路肩側に向かってこの凍結や除雪された雪は山のすそ野のようになっていますので、ここにタイヤが乗り上げる事になります。
この乗り上げる部分が土や石であればそのまま乗り上げて走行出来るでしょう。
しかし高さ数㎝の氷や雪の塊は表面がツルツルですので、タイヤが乗り上げようとしてもこの非常に低い摩擦でタイヤを弾いてしまうんです。
するとどうなるか?単にタイヤが乗り上げられないだけでなく、車体がカニの横歩きのように真横に、つまり右側車線にスライドすることがあるのです。完全に真横にではなくても車体の前か後いずれかがスピンして隣接車線にはみ出てしまいます。
これも大変に恐ろしい現象です。だから路肩ギリギリを走る場合は路肩にある氷などにも気を付けましょう。なお氷や雪山に一気に乗り上げようとして、深い角度でタイヤを侵入させようとするほどタイヤが弾かれる傾向があります。どうしても乗り上げる必要がある場合はハンドルを大きく切らずに浅い角度で進入しましょう。
2、右側車線を中心に走る。
この方法だと上記の側道からの車との接触や、路肩の氷でのスリップを避けられる可能性が高くなり、一見安全のようですが落とし穴もあります。
それは対向車との接触もしくは正面衝突のリスクです。
こんな事は夏だって同じ、どんな狭い住宅街の脇道でもある、と言ってしまったらそれまでですが、冬道だとリスクがより高まるという事です。
路肩よりも道路中心側の方が凍結の影響によるスリップ事故の可能性を低く出来ますが、道路の中心でも凍結はもちろんあります。
それは別の車の車体から落ちた雪や氷が原因です。落ちた氷の上を通過することによってスリップしたりハンドルを取られる事もあるでしょうし、氷や雪が多くの車にひかれて溶けていったんは姿を消しますが、その後時間をおいてその水分が凍結して路面がブラックアイスバーンになる事もあります。
ですから右側車線は路肩側よりも一見安全ではありますが、実はこのような罠が潜んでいることを常に念頭に置いて運転しましょう。
冬道の車線選択はその場その場での判断が必要
冬道を安全に走るには最低でも1シーズンそれなりの走行距離を走らないとコツが掴めないと思います。
出来れば2シーズン以上の経験が欲しい所です。
しかし何年も何年も走っても冬道は恐ろしいのです。
同じ場所でもわずかでも時間が異なれば、そして日が異なれば、年が異なれば路面状況はまるで違ってきます。これがまさに自然の恐ろしさなのです。
北海道は除雪経費節約のために年々ロードヒーティングを停止させる傾向があります。
ロードヒーティングは絶対万能とは言いませんが、厳冬期の坂道でも凍結を防いで安全に走る事が出来るのに残念に思います。
それでいて特別除雪強化や凍結防止剤散布の量が増えたとも思えないです。
ですから慎重には慎重を、そして経験を積むことによって危険を回避する知恵を身に付けるべきです。
またそれは決して過信であってはなりません。
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