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冬道運転の基本

冬道の運転は理論も知ること

【本項目は冬道に慣れている方、生まれてずっと雪国の方は読まなくてもよいかもしれません。しかし基本を思い出すためにも読んで頂ければ幸いです。】

冬道の運転は本当に恐ろしいです。

私はずーっと温暖な首都圏にいましたし、雪が降っても積もるのは年に1~3回程度。別に車に乗る必要も無かったので何も問題はありませんでした。

でも北海道に引っ越してからは話が違います。幸か不幸か北海道に引っ越してきたのが3月末、しかも雪が凄く多い年だったので冬道の練習になったのは考えようによってはラッキーだったかもしれません。

引っ越す前から冬道の事を色々と調べて勉強しました。だから知識は生粋の道民の方よりもあるかもしれません。

雪国で生まれ育った方は運転に限らずいろんな生活の知恵は理論から入るのではなくて体験によって身に付けて行く人が多いと思われるからです。

だから北海道で生まれ育った方からすると私は全然ひよっ子ですが、でも本記事を書いている段階で既に7冬経験しましたし、豪雪地帯も走り、何よりもずーっとFFの車で過ごしてきたのです。

もちろん4WDも乗ったことはありますよ。でもFFの運転というのは頭で相当考えながらでないと冬道は走るのが難しいという事も身をもって体験しました。

 

既に身についている方でも、これから初めて雪道を運転される方でも「なぜ滑るのか?」、「なぜ恐いのか?」などの理論も学んでほしいです。

体で覚えろ!というのは大切ですが、一例としてオリンピック選手はなぜあんなに凄いのでしょうか?

理由はたゆまない訓練はもちろんですが、良いコーチについて理論をきちんと学んでいるからです。

短距離走にしても、何も考えずに毎日10km練習で走る人と、「どういう足の動きと体の姿勢で早く走れるか?」を学んで10km走る人とでは結果は大きく違うのです。

車の運転で今更良いコーチに、というのは難しいですが本記事が一助になれば幸いです。

 

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冬道の基本はとにかく「急」操作をしないこと

一番大切なことは教科書に出ている通りで「急」という文字の付く操作をしないことです。

・急加速

・急ブレーキ

・急ハンドル

です。

そして「スピードを出さない」、「車間距離を十分に」も重要です。

でも上記は雪道の場合です。

雪道と凍結路面はまるで違います。

雪がある程度路面に積もっていれば場合によっては夏の乾燥路面よりも早く停車します。

タイヤが雪を噛んで(巻き込んで)早く停まるからです。

 

↓こういう状況はあまり(全くではない)滑りません。

(クリックで拡大します)

でも凍結路面は違います。

スケートリンクと同じです。4WDだろうが、クロカンだろうが新品のスタッドレスだろうがとにかく停まらないしハンドルのコントロールも効きません。

何やってもダメです。

唯一大丈夫(完璧ではないが)なのはスパイクタイヤですが、現在は緊急自動車と除雪車以外は使用が禁止されています。

 

↓見るからにツルツル路面。恐ろしいほど滑ります。

(クリックで拡大します)

↓スタッドレスタイヤで磨きあげられた路面

(クリックで拡大します)

 

↓マンホールなどの金属はさらに滑る!

横断歩道などの縞々のペイント部分も滑ります。

(クリックで拡大します)

上記のように磨きあげられた路面はとにかく停まらないです。

また除雪時に残った雪が凍ったものや、厚い氷が通過車両によって削られた路面はまるで「針の山」ならず「氷の山」、「氷の山脈」になります。

見た目は凸凹しますが表面はツルツルなので滑りますし、何よりハンドルがひどく取られます。

道の穴や対向車を避けようとハンドル操作を誤るとたちまち車体がおかしな方向を向いてしまい避けるはずだった対向車に激突とかもありえます。

 

表面が凸凹の道を走る時は上述の「急な操作」以外に知っておくべきことがあります。

それは道の広さに広さに関係なく対向車とすれ違う時は(または歩行者の横を通る時)、ハンドル/アクセル/ブレーキには一切触れずに惰性で通過するということです。

冬は除雪された雪が路肩に避けてあるのでどうしても道が狭くなっています。

道の真ん中も凍結していることも多いですし、幹線道路のように除雪がしっかりしていて道幅が広い道路でも思わぬ凍結でいきなり車体がスピンすることもあり得ます。

 

特に運転席からは路面の凍結は分かりません。

濡れているように見えてツルツルの「ブラックアイスバーン」の事も多く、日中太陽が出ていても絶対に凍結していないなんて言いきれないのです。

路地などでどうしても狭い道ですれ違う必要もあります。

でも夏のようにギリギリを狙ってはいけません。余裕があれば停止してすれ違いが終わるのを待ちましょう。後ろからクラクションならされても安全優先です。

停止できなくても一切の操作をせずに惰性ですれ違うようにしましょう。手を加えてもハンドルを少し修正する程度にしましょう。

いきなり車体前部や後部がずるっと滑ってぶつけることがあり得ますので。

4WDだってスピンするし停まれない

雪国は4WDへの過信者があまりにも多すぎます。

4WDで有効なのは発進の時だけです。

それも今の4WDの9割は「スタンバイ4WD」と言って駆動輪(多くは前輪ですね)が滑って一瞬おいてから4WDになるので基本はFF(一部FR)なのです。

しかも発進した後は滑っても4WDにならない車も多いのです。常に4輪に駆動力がかかる真のフルタイム4WDは一部のクロカンにしかないと思ってください。

高出力のスポーツカーの4WD だってズルッと滑らないと従軸(普段主に動力がかかっていない方の車軸)に伝達されないものがほとんどです。

 

4WD に乗っている人は過信からか発進時もアクセルをガバッと踏む人が多いです。

札幌市内の中心地でもそのせいでしょう、いきなり180度スピンする車も見かけます。前にいた車が発進と同時にこちらに運転席が向くのですから後続車は生きた心地がしません。このようにきれいに180度スピンは珍しくたいていは「どこに行くかわからない」状態になります。

以下の参考記事でも書いていますが4WDの方がスピンしやすく、スピンした時に回復が難しい傾向にあります。

もちろん運転の状況、路面の状況にもよりますが「4WDはスピンしにくい」なんて言っている人は嘘つきです。

 

とにかく4WD は発進時の手助けのみと考えるべきなのです。

参考記事: 北海道の車は4WDでないとダメなのか?

 

あと4WDで勘違いしている人が多いのはブレーキもよく効くと思っている人です。

メーカーはカタログで「4WDなのでエンジンブレーキが4輪に効くので安心」というところがありますが、これは嘘です。

まずスタンバイ4WDだとエンジンブレーキの時はFF (一部FR)と同じですし、フルタイム4WDでもエンジンブレーキ時のメリットはあまりありません。

あってもごくわずか、体感できない場合が多いと思います。

停まりたくても停まれないとき

ツルツルの路面では「目で見て分かるか分からないか」程度の下り坂でも停まりません。

平坦路でもびっくりするくらい停まりません。

でも先行車や障害物、歩行者がいたら何が何でも停まる必要がありますよね。

その時はどうするか?

路肩の雪に車を突っ込んで停めるのです。

車体を完全に突っ込まなくても片側のタイヤが路肩の雪に接触しただけで急激に減速します。

これは頭に叩き込んでおいた方がよいテクニックです。

でもこの時に急ハンドル操作をすると思わぬ方向に車体が向いて危険なこともあります。

だから「速度を出すな、車間を開けろ」というのです。

 

また車間距離の目安ですが、これは路面の状況や速度などによって大きく異なります。

でも経験上非常に大雑把な言い方で恐縮ですが、

停止目標(或いは先行車)から車3台分くらいの場所で確実に停まれる速度とブレーキが必要

と私は考えます。

これは↑平坦路の場合です。下り坂だったらもっともっと距離をとらないと停まりません。

確実3台以上のスペースで停まれるくらいまで減速したらあとはブレーキを軽く踏みながらクリープ(MTならばアイドル又はクラッチ切断)で停止目標に接近するようにします。

 

北海道では田舎道や郊外を除き登坂や下り坂の底に交差点がある場所にはロードヒーティングが入っている場所が多いです。

これは路面の下に温水パイプを通して常に路面を温めて凍結しないようにする仕組みです。

効果は抜群で凍結はしない、雪は積もらないと素晴らしいものです。

でも短時間に大量に雪が降ったり、強い吹雪が連続して吹いたりすると凍結することもあります。

さらに近年ロードヒーティングを停止する交差点が増えています。理由は維持費がかかるからです。

 

札幌市の場合、一冬のロードヒーティングの燃料代が10億円とか聞いています。

(ロードヒーティング以外の除雪や各種雪対策をまとめると札幌市は1年で150~200億円使っています。冬の時期に日割りすると1日1億円使っているそうです。)

 

ロードヒーティング停止の場所は雪が降る時期の少し前(10月末頃)に広報誌やネットで告知されます。

その場所は「除雪を強化して、融雪剤の量も増やします」という事になっていますが、実際はロードヒーティングがあるとないとでは天国と地獄ほどの差があります。

でも維持費を考えると仕方ないのかな?とも思うんですが・・・。

凍結路での2WD 発進のコツ

以下の説明は4WD車でも役に立ちますので参考にしてください。

2WD車で私は7冬越しましたが、困るのは発進時だけです。それもツルツルの凍結以外は殆ど問題ありません。

でもツルツル路面の坂道発進はお手上げになる確率が高くなります。

私は北海道に来る直前に調べてこれを知っていたのでツルツルの坂道から発進しなければならない道は通らず安全な道を迂回するようにしています。(ロードヒーティング設置場所は除く)

実は多くのタクシーもそういう運転をすることがあります。もちろんお客さんの了承を得てからです。

タクシーの9割はFRなのでFF車よりも発進に難儀するからです。

 

平坦路でも発進に戸惑う事がありますが、少しの工夫で大幅に改善できます。

●停止時に駆動輪(FFならば前輪)の直下にツルツルの氷や金属板(マンホールなど)、横断歩道などのペイント面が来ないように意識する。

●停止時及び走行時も極力雪が積もっている場所、または氷の上に薄っすらでも雪の粉が吹いているようなところを選ぶようにする。

●赤信号が長いなどの場合は、同じ場所にタイヤが置かれると車重により路面の氷が溶け始めて氷とタイヤの間に水の膜が出来て非常に滑りやすくなる。これを回避するために停車中でも車間距離や安全上問題なければ1㎝でもよいのでタイヤの位置をずらす。これだけで発進がとても楽になる。

●滑って発進が難しい時は安全を十分に確認の上、クリープ(MT車は半クラの断続かアイドル)の状態でハンドルを左右に細かく降るようにするとタイヤと路面の摩擦係数が上がって発進しやすくなる。

また後続車がいなくて安全上問題なければ数十cmでもよいので一度バックしてから前進に入れると発進しやすくなる。

 

殆どの場合以上の4つで大体改善出来ます。

なおツルツル路面でも気温が-6~8度くらいまで下がると氷の表面の水分も凍って急に滑りにくくなります。

滑るのは氷のせいではなくて、氷の表面の水分で滑るのです。

でも気温が極めて低い状況下でも上述のように赤信号などで長く同じ場所に停まっていると車重で氷が溶けて滑りやすくなってしまいます。

その場合も上記の方法で改善すことが出来ます。

 

とにかく初心に帰り、「おっかなびっくり」で運転してほしいです。

そのくらいの方がとても慎重になるので事故を起こし難くなるはずです。

特に冬は絶対に無理してはいけません。

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