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ABSの誤解

ABSは何のためについている?

【本記事は北海道に限った内容ではありません。しかし知っておくと特に冬の北海道では知識が味方になってくれるはずです。】

ABS(アンチロックブレーキシステム)は今の殆どの車についており、バスやトラックでも当たり前になっています。

多くの方が知っていますから原理や動作は他サイトや書籍に譲ります。
一言で言うとブレーキをかけてもタイヤや車輪がロックしないようにする装置ということです。

 

一番最初は鉄道で採用されました。
鉄車輪と鉄レールの摩擦はゴムタイヤとアスファルトの1/5~1/10と極めて小さく、重たい車両も小さなエネルギーで動かすことが出来ますが、その反面ブレーキ時に車輪は簡単にロックしてしまい、そのまま走ると止まらないばかりか車輪にもレールにも大きな傷を付けてしまうのです。

この傷をフラットといい、酷くなると丸い車輪が真っ平らになります。
騒音や振動の原因になるほか、車輪の劣化を進めさせてしまい危険です。

新幹線は1964年の開業当時から現在に至るまで全ての車両に付いています。

 

次に航空機用が開発されたのですが、航空機は着陸した瞬間にタイヤは停止状態から瞬間的に200~250km/hまで加速され、しかも前輪にはブレーキがありません(ごく一部例外あり)からブレーキのある主脚が安定して走行・減速をしないと大事故になります。

これほど過酷なブレーキの使われ方をされる乗り物は他にありません。

ですから航空機ではタイヤを絶対にロックさせてはいけないのです。

 

車がその次になり、今は当たり前の機能ですがほんの10年前まではグレードによっては付いていない、もしくはオプションの車もありました。

車でABSが威力を発揮するのは凍結路や雨で濡れている路面です。

乾燥路や濡れていない砂利道ではABSなしの車より制動距離が伸びることがあります。



タイヤのロックを回避出来ると何がよいのか?

タイヤのロックが回避出来るとハンドルを思った方向に切りやすくなり、車体の挙動が安定します。
(どんな路面でも、ということはありません。)

つまり挙動を安定させるためのものであり、制動距離を短縮するのがABSの目的ではありません。

凍結路や雨に濡れた路面だとほんの少し強くブレーキを踏んだだけでタイヤは簡単にロックします。

特に凍結路、ブラックアイスバーンなどではブレーキペダルを「足の指で触れる」くらいの踏力でも簡単にロックします。
この場合、まずシフトダウンで十分に速度を落としながら数回に分けて踏む操作が必要になります。

参考記事:

普通の凍結路面とブラックアイスバーン

どんなに慎重な運転をしても恐ろしい事故のある冬

 

凍結路の恐ろしさを経験するドライバーはもはや北海道や東北、北陸の方だけではありません。

今冬の大寒波で九州でも大量に雪が降ったように全国何処でも凍結路を運転する可能性が増えてくるのです。

このような道では、
(以下は全て十分な車間距離と適正な速度を前提にしています。)


・早めにシフトダウン(Bモード)でエンジンだけで減速する。

・ブレーキは数回に分けて触れるようなタッチで踏む。

・直線路での減速でもハンドルはしっかり持って、いつでも横滑りなどに対処出来るようにする。


などが大切です。

ABSの誤解とは

ABSには多くの誤解があります。
主なものをあげてみましょう。


・ABSが付いていると制動距離が短くなる。(どんな路面でも)

・ブレーキペダルを軽く踏むだけで強いブレーキがかかる。


など、他にもあるかもしれませんね。

最初の「制動距離が短くなる」は非常に多くの人が勘違いされていて、人によっては車のディーラでさえ「ABSが標準装備なので短い距離で止まれます」なんていう人も(稀に)います。

(これは営業上「とにかく売る!」ためのものかもしれませんが。)

 

先に述べたように、

ABSは制動距離を短くするものではありません。車体の挙動を安定させるための装置です。

凍結路や濡れた路面では短縮効果がある場合もありますが、絶対ではありません。

乾燥路や砂利道では逆に制動距離が伸びます。

凍結路などに関して言えばABSや車の性能に依存せず、「制動距離をうんと長くとる」のがベストであり正しい運転方法です。

スタッドレスタイヤの場合、ツルツルの凍結路では乾燥路面の10倍の制動距離が必要です。

 

また乾燥路や砂利道では地面の凸凹などを誤感知してABSが不要でも働き制動距離が伸びることがあります。

乾燥路や砂利道では思い切りブレーキを踏んでタイヤをロックさせた方が早く止まる事が多いです。

しかし乾燥路だけABSをオフには出来ませんので、もし乾燥路で最大限の強いブレーキが必要であればABSが作動した場合一瞬だけブレーキペダルを離し、その直後にもう一度床まで踏み込みます。

車種や路面状態にもよりますが、これでABSを一度リセットすることが出来る車もあります。
状況はご自分の車で安全な場所で試してみてください。

 

「ブレーキペダルを軽く踏むだけで強いブレーキ」の誤解ですが、これはもしかしたらブレーキブースターと勘違いしているのかもしれません。

教習所で「車は人間の踏力だけではなかなか止まらないので、足の力を強く増幅してブレーキをかける装置が付いている」と教わっていますね。

このことと勘違いされている可能性があります。

ABSの有無に関係なく、「強いブレーキ=思い切り床まで踏込む操作」が必要なのです。


ただし、最近は床を踏抜くほどの強い操作をしなくても、普通ではありえないほど素早いブレーキペダルの踏込みをすると車が「緊急ブレーキだ」と判断して、自動的にブレーキ力を強める働きをする「パニックブレーキ」(メーカにより名称が異なる)を備えている車種やグレードもあります。

この場合、ハザードランプが早い間隔で点滅する機能がついているものもあります。


 

とにかくABSを過信してはいけません。

4WDへの絶大な過信と同様です。

参考記事: 北海道の車は4WDでないとダメなのか?

安全に車を運転する秘訣は「基本とルールを守り慎重に運転すること」なのです。

 

これからの時代は自動停止ブレーキや自動運転への過信が原因の事故が多発しそうで気をつけなくてはいけません。

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