冬~春に2WD車が走りにくい場所は?
北海道はいつまで雪が降る?
札幌も春到来となり表通りからの車道からは雪がほぼ消えてきました。
(歩道はけっこう雪と氷が残っていますが。)
でも道央、道東、道北地区はまだまだ雪や氷が路面にたくさん残っている場所があります。
札幌市街地も完全に雪が無くなるのは例年4月第1~2週、時によりゴールデンウイーク最初の頃となりますが、春先は4月第1週でも思わぬドカ雪が降る事があります。
しかも春先の特徴で水分を大量に含んだ非常に滑りやすいシャーベットが降ってきます。
ですからまだまだ雪に対して油断は出来ませんので、この記事を参考にして頂ければ幸いです。
北海道の車の実態と誤解
北海道=4WD天国というイメージがあります。
言い方を変えると北海道内を走る車はほぼ全て4WDであり、そうでないと冬は走れないというイメージです。
本当でしょうか?
確かに2WDでは冬はかなり難儀する道・場所はたくさんあります。
2WDが「冬のここは苦手!」という場所のことです。
これらについて道民も知らない実態をご説明しましょう。
最初にお知らせしておきますが私の車は東京から持って来たFFの国産車であり、既に札幌に来て10年経ちますがずっとこの車を乗り続けています。
また寒冷地仕様対策(バッテリー大型化その他等)は一切しておりません。
せいぜい「冬はウオッシャー液を薄めずに原液で使う。」、「早めにスタッドレスタイヤに変える。」くらいですが冬特有かも?と思われるトラブルは皆無です。
寒冷地仕様車でなくても冬の北海道ではこれら2点以外何もしなくても問題ありません。
北海道は所詮「亜寒帯」と「亜」が付く程度の地域ですし、寒冷地仕様でない中古車がロシアに輸出されてシベリアでもノントラブルでたくさん走っているのです。
さて道内を走っている車の駆動方式について本サイト内のあちこちの記事で時折触れることがありますが、改めて復習という事で実態をまとめてみます。
▶一般乗用車の4WDの比率は7割~8割弱くらい。
▶個人所有の乗用車も「この車種はFFまたはFRしかない」というものを選択する人も多くいるので一定数4WDではない駆動方式も多い。
(駆動方式よりも「この車が欲しい!」という理由で購入した人。)
また本州の温暖な地域から持って来た2WD車など(うちの車がこれに該当)。
▶レンタカーはごく一部除いてほぼ全て4WD。
▶タクシーは従来からあるセダンタイプはほぼ全てFR、最近徐々に増えて来たトヨタのワゴンタイプの「JPN TAXI」はFF。私が知る限り「JPN TAXI」も4WDは見かけない。
▶個人タクシーは様々で一部4WDも使われている。多くはFRとFF。率は分からないが4WDの比率は低いと思う。
タクシー会社の車両で4WDは見たことがないし、数人の運転手さんに聞いても「さあ、もしかしたら坂の多い小樽などではあるかもしれないが私は全く見たことがない。」という回答。
さらに聞くと「4WDは値段が高くなるし、メーカー標準車両ではない。機構が複雑なのでメンテ費用も高くなるので会社で数十台所有とかは厳しいと思う。だから一番安い標準品のFRを使っている。」ということだった。
▶バスは全てRR。つまり本州などの温暖地方と同じ。
▶トラックは中型~大型はFR、小型(宅配用など)は一部4WDもあるのかも?
以上ですが、業務用車両(トラック、路線バスなど)は駆動輪にチェーンを巻いて走っている車両も多いです。
ちなみにこれらの車両はスタッドレスタイヤの上にチェーンを巻いています。
タクシーや都市間バスでチェーンを巻いている車両は見たことがありません。
除雪車(大型の)やパトカー、救急車などの緊急自動車は今でもスパイクタイヤが認められているようで、これれを使っています。
特に大型除雪車の直径1m以上あるタイヤにスパイクが無数に出ているのは圧巻です。
FRのタクシーは本当に運転が難しく、平坦な道でもツルツル路面だと発進に難儀して車体後部を左右に大きく振りながら発進しています。
この様子を見ると運転手さんが本当に冬は気の毒に思えると同時に「さすが2種免のプロドライバー」とも思えます。
だから冬の凍結路でタクシーに近づくのは危険です。
冬~春に2WDで苦手な場所・道はどこ?
これについても分かりやすく箇条書きで説明します。
以下の内容はほぼ全て私が北海道で経験したことに基づいています。
●凍結路/圧雪路からの坂道発進
普通に雪が積もった道ではさほど難儀しません。
しかしツルツルの凍結の登り坂での発進はほぼ不可能に近いです。
圧雪路は雪が踏み固められていますのでツルツルの凍結路面と条件はさほど変わりません。
どの程度の坂の場合か?という質問に対しては「目で見て分からないほど緩やかな坂も含む」とお答えしておきましょう。
以上は FF/FR共にですが条件により圧雪路ならばFFだと発進出来ることもあります。
やはり駆動軸の上に重たいエンジンがあって、その重量で駆動軸を上から地面に押さえつけているのが功を奏するのですね。
●シャーベット状の雪の上
これは登り坂/平坦路、そして発進時/走行中も含まれます。
シャーベット状の雪とは融けてベチャベチャになった春先の雪、厳寒期でも多くの車が通過する道路で除雪前の雪が溜まった状態の道でよく起こります。
関東などでは大量に水分を含んだ雪というよりもまるでシャーベットが降ってきますがその状態の雪を言います。
なぜこれが問題かというと「走行抵抗が非常に大きい」のです。
つまりこのシャーベットがタイヤに纏わりついて速度を低下させてしまうのです。
・平坦路からの発進
ハンドルが取られて車体をまっすぐに出来ずに狭い道路ですれ違う場合は対向車と接触する可能性があります。
また駆動輪が激しく空転して前に進まなかったりします。
激しい空転をすると雪は3mくらいの高さまで撒き上げられてしまうほどです。
・登り坂からの発進
この場合もツルツル凍結路面の時と同じようにほぼ発進不可能となります。
とにかく走行抵抗が大きくどうしようもありません。この抵抗に打ち勝って発進しようとして強くアクセルを踏むと虚しく空転するだけ、滑りやすい路面だからと言って軽くそーっと踏むと今度は登り坂自体の抵抗に負けて(つまり重力に負けて)起動が出来ないのです。
・登り坂を走行中
2WDで冬の登り坂を上る場合一度走り出してしまえば登り切れるとよく言うのですが、シャーベットの路面の場合は坂の途中で停まってしまうことがあります。
例えば30km/hくらいで坂を登っていて途中で大量のシャーベットに遭遇したとします。
するとシャーベットと登り坂による走行抵抗によって速度はどんどん低下します。
登り坂の抵抗(重力)だけならばアクセルを強めに踏めば難なく登っていきますが、シャーベットの抵抗は驚くほど車速を低下させ、あっという間に10~5km/以下まで落ちます。
こうなるとアクセルを強く踏んでも空転するだけで車速の低下が収まりません。
そしてやがて車は坂の途中で停止してしまいます。
極端に速度が低下して「このままでは後続の車に迷惑をかけるので路肩に寄せよう」と思ってハンドルを切っても思う方向に車体は動きません。シャーベットの海に任せるだけになってしまうのです。
こうなる前に早目に(まだそこそこ車速が出ているうちに)ハザードを付けて左の路肩に寄せるしかありません。
そして後続車/対向車がいなくなったらハンドルを右に切ってUターンして坂を下るのです。
もちろんこの状態でも思ったようにUターンしてくれるとは限りませんので、バックギア(ニュートラルは危険)に入れてアクセルが反応する路面まで下がり、もう一度DポジションでUターンを試みます。
一度でダメなら数回繰り返すのです。
ではUターンに成功して来た道を下る事が出来たらどうするか?
極力平坦の道を選びなおして目的地に向かうしか方法がありません。
もちろん急な登り坂でもロードヒーティングが入っている道ならばFRでも難なく登坂できます。
登り坂で発進できない場合
基本は上記に書いた「Uターンして坂を下り、平坦路の道を選びなおして別ルートを走る」となります。
これが大原則です。
しかし何かしらの理由でUターンが出来ない場所で停止してしまうこともあり得ます。
その場合、
1、まず可能な限り左の路肩に寄せる。
2、ハザードを付ける。
3、狭い道で後続車が来たら窓から手を出して先に行くように合図する。
4、後続車/対向車がいなくなり、かつ歩行者もいない事を確認したらハザードを付けながら坂をバックで降りる。
この場合ギアはバックに入れる(バックの駆動力を使うわけではなくて、後退のランプが点くのでハザードと合わせて後続車に知らせることが出来る。)、ミラーも見ながら後続車が近付いて来たら早めに停車してその場合はギアーをDに入れて後続車の通過を待つ。
5、安全でUターン可能な場所まで下る事が出来たらUターンを試みる。
となります。
私は上記をやらざる負えない場面に数回出くわしましたが、今年の2月に坂の途中で発進不能となりお手上げで状態でいると近所の人数人が助けて下さいました。
その時は「大量の砂を駆動輪に食い込むように撒いてくれた。」、「後ろから数人がかかりで車体を押してくれた」などで無事に坂道発進が出来て平坦路まで走り抜けることが出来ました。
全て見ず知らずの近隣の方で中には若い女性も2人ほどいらっしゃいました。
本当に心から感謝しています。Uターンも出来ず困っていたのです。
お礼を発進出来た車内から大声で言っただけで(降りて丁寧に言っていたらまた発進出来なくなっていた。)きちんと一人一人に言えずに今でも心残りですが人の温かさに触れた感じがしました。
北海道は冬が厳しい土地なので車の発進などで困っているとわりと近隣の人が助けに来てくれます。
それはとても有難く嬉しいのですが、凍結の坂道で車を後ろから押すという事は大変に危険が伴います。
ですからそういう車を助ける場合も決して一人で押すことはしないで欲しいのです。
どっちみち一人では助けることが出来ませんので必ず数人の人の連携が必要です。
これだけは忘れないでください。
FR/FFのタクシーで目的地途中に登り坂がある時は
当然タクシーにも登り坂の場所に行ってもらわなくてはなりません。
4WDのタクシーは個人タクシー以外では極めて少数(ないかも?)なので運転手さんには気の毒です。
乗車して目的地を告げた時に運転手さんから、「そこは途中に急な登り坂がありますね。この車はFR(又はFF)なので停止またはごく低速になると登れなくなりますが、その場合は坂の手前か途中で降ろしても良いですか?」と聞かれることがあります。
もしくは「途中に急な登り坂があるのでこの車では登れないかもしれないので、XXを通る迂回路で良いですか?OOO円くらい高くなりますが。」と言われることもあります。
また特にこのような会話がなされない場合、現地に行って坂を登れず大変なことになることもまれにあります。
このような場合は、
・坂の停止してしまった場所で降ろしてもらう。
・Uターンをして別ルートを走ってもらう。(当然料金はその分高くなります。)
・乗客に後ろから押してくださいと頼まれる。
最後の乗客がタクシーを押すというのはコントみたいな話しですが、実際に過去には経験した人もいます。
(私はありません)
もちろん安全な場所、力のありそうな男性乗客など色々とあるとは思いますが実際にあったようです。
ただどんなに力があろうと車を後ろから押す(特に凍結の登り坂)というのは非常に危険なので今はこういう事を頼まれることはないと思うし、乗客も自ら申し出るのは止めた方がよいです。
命に関わります。
まとめ:北海道では2WD車は乗るべきではないのか?
結論は「乗るのは何も問題ない。実際多くの2WD車が走っている」という事になります。
ただし「停止時には常に駆動輪の位置を考えて走る必要がある」ということです。
ツルツルの氷の上に駆動輪を乗せて停止するよりも少しでも粉雪やアスファルトが露出した場所で停止するように心掛けていれば特に2WDが弱点になることはありません。
他に気を付けたいことは、
・凍結や圧雪の登り坂で停止すると発進が不可能になることが多い。
・FRは平坦路であっても凍結路面での運転が非常に難しい。
出来ればFRは避けた方がよい。
ということくらいでしょうか。
また4WDは万能ではありませんし、スピンすると2WDよりもスピンが収まるのに時間がかかるという意見が圧倒的に多いようです。
近年の4WDの9割以上の車は「主となる駆動輪(例:前輪)が空転した時だけ従輪(例:後輪)に動力が伝わり駆動輪の空転が一定以下に収まると通常の2WD車として走行する。」、「発進時以外は4WDにはならず、一定速度以上(車にもよるが30~40km/hとか)で空転やスリップしても2WDのまま」など4WDシステムは発進時しか考慮されていないものが圧倒的に多いのです。
ディーラーの整備士の方に聞いたのですが理由はカタログ燃費の向上のためだそうです。
スリップの時だけ4WDにすれば同じ車種/グレードでもカタログ燃費が10%は違ってくると言っていました。
そしてブレーキ時は2WD/4WD共にほぼ無関係です。
メーカーのカタログでは「4WDなので4輪に安定してエンジンブレーキが利くので安心」とよく書いてありますが、普段の運転ではほぼあり得ないような限界走行でもしない限り差はありませんし、一瞬でもブレーキペダルを踏めば駆動方式は無関係です。
参考記事を書いてありますので以下をどうぞ。
生粋の道民の方でも北海道内の2WD車の多さに意外と気が付いていないようですし、4WDも常に4輪に駆動力がかかっていると思っている方が多いようです。
2WDでも冬の北海道は走れます。
FF車を10年北海道で使った私が身を以て経験したことです。
ただしちょっとだけ2WDの特性と運転のコツを知る事が必要となります。
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